保育園・幼稚園で癇癪を起こすのは異常?年齢別に見る正常範囲と注意点

保育園・幼稚園で癇癪を起こすのは異常?年齢別に見る正常範囲と注意点

「朝の登園時、園の玄関でひっくり返って泣き叫ぶわが子……。周りの目が痛い」
「お迎えに行くと、先生から『今日も癇癪が激しくて』と言われ、申し訳なさで消えたくなる」

保育園や幼稚園という集団生活の中で、わが子が激しい癇癪(かんしゃく)を起こすと、親としては「うちの子、どこかおかしいのかな?」「しつけが悪いと思われているかも」と不安や孤独を感じてしまいますよね。特に他の子が落ち着いて過ごしているように見えると、その焦りは募るばかりです。

結論から申し上げますと、園で癇癪を起こすこと自体は、決して「異常」ではありません。むしろ、家庭とは異なる「社会」という環境で、子どもが一生懸命に適応しようともがいている証拠でもあります。ただし、その激しさや頻度には年齢ごとの「目安」があり、親が知っておくべき心のサインが隠されていることも事実です。

この記事では、児童心理学の視点から、園での癇癪が起きる原因を年齢別に徹底解説します。いつまで続くのか、どんな時に相談を考えるべきかという指針も示しますので、最後まで読めば今の不安が「具体的な見通し」に変わるはずですよ。


【結論】保育園・幼稚園での癇癪は「成長のプロセス」である理由

子どもが園で癇癪を起こす最大の理由は、「脳の未熟さ」と「環境のギャップ」にあります。大人のように言葉でストレスを解消したり、論理的に状況を理解したりできない子どもにとって、泣き叫ぶことは唯一の全力の自己表現なのです。

「外」で頑張っているからこそ爆発する

多くの子どもにとって、園は「頑張る場所」です。家のように自分の思い通りにはならず、友達と譲り合い、先生の指示に従わなければなりません。その緊張の糸がふとした瞬間に切れたとき、癇癪として表れます。これは、子どもが社会的なルールを学ぼうとしている、いわば「成長痛」のようなものです。

もし家では穏やかなのに園でだけ荒れる、あるいはその逆という場合は、保育園・幼稚園ではいい子なのに家ではイヤイヤが激しいのはなぜ?の記事で詳しく解説している「二面性」のメカニズムを知ることで、お子さんの心の負担がより深く理解できるでしょう。


【年齢別】園での癇癪の「正常範囲」とよくある引き金

癇癪の質は、年齢(発達段階)によって大きく変わります。今のお子さんの姿が、発達のどの位置にいるのかを確認してみましょう。

1歳児:感覚的な不快感と「伝えたい」の爆発

1歳児にとって園生活は、まだ刺激が強すぎる場合があります。「眠い」「お腹が空いた」「もっと遊びたい」という感覚的な不快感が、語彙力の不足によって全て「泣く・暴れる」に集約されます。

  • よくある引き金:活動の切り替え(遊びを中断して給食へ行くなど)、親との分離時。
  • 正常範囲:泣き始めても数十分で切り替えができる、保育士さんの抱っこで落ち着ける。

2歳児:自己主張の衝突と「イヤイヤ期」のピーク

自我が急激に発達する2歳児は、園でも「自分はこうしたい!」という欲求が抑えられません。2歳児のイヤイヤ期のピークは、集団生活のルールと激突しやすい時期でもあります。

  • よくある引き金:お友達との玩具の取り合い、自分でやりたいのに手伝われた時。
  • 正常範囲:床に寝転んで暴れる、物を投げる。毎日数回起きることもあるが、楽しい活動には参加できる。

3歳児:言葉と感情のズレによる葛藤

言葉が達者になる3歳児ですが、自分の複雑な感情(悔しい、寂しい、恥ずかしい)を説明する力はまだ追いついていません。そのため、理屈ではわかっていても体が反応してしまうのです。3歳で言葉が達者なのにイヤイヤが激しい理由を知ると、この時期特有の「わかっているのにできない」もどかしさが見えてきます。

  • よくある引き金:勝ち負けへのこだわり、予定の変更、複雑な人間関係。
  • 正常範囲:自分の思い通りにならないと激しく抗議するが、後で「ごめんね」と言えることもある。

なぜ「園」という場所で癇癪が起きるのか?3つの背景

家庭では起きないような激しい癇癪が園で起きる場合、そこには「集団生活特有のハードル」が存在します。

1. 刺激過多(センサーの疲れ)

園は、常に誰かの声がし、誰かが動いている賑やかな空間です。感覚が敏感なタイプのお子さんにとって、これは常にノイズの中にいるようなもの。脳が疲れ切った結果、ちょっとしたきっかけで癇癪のスイッチが入ってしまいます。癇癪と感覚過敏の関係を理解しておくと、環境調整のヒントが見つかるかもしれません。

2. 予測不能な出来事への不安

家庭はルーティンが予測しやすいですが、園では急な行事の練習や、お友達の予想外の行動が多発します。見通しが立たない不安が強い子は、防衛反応として癇癪を起こし、自分の心を守ろうとします。

3. 「自分だけを見てほしい」という愛情欲求

先生を独占できない環境は、子どもにとって寂しさを生みます。「悪いことをすれば(癇癪を起こせば)先生が自分だけに向き合ってくれる」という誤った学習が起きているケースも稀にありますが、それは愛情不足ではなく、単なる「関わり方のスキルの未熟さ」です。


親が園の先生と連携する際の3つのポイント

癇癪の報告を受けた際、親としてどのように対応し、先生と協力していけば良いのでしょうか。

① 報告を「責め」ではなく「情報」と捉える

先生が癇癪を報告するのは、あなたを責めたいからではなく、家庭と情報を共有して「お子さんが何に困っているか」を一緒に探りたいからです。「申し訳ありません」と謝りすぎるよりも、「家ではどうですか?」「何がきっかけでしたか?」と前向きに深掘りする姿勢が、最善の対策に繋がります。

② 家での「落ち着きグッズ・ワード」を共有する

例えば「このタオルを持つと落ち着く」「『大丈夫だよ』より『びっくりしたね』と声をかけると切り替えが早い」など、家庭での成功例を先生に伝えておきましょう。癇癪をできるだけ早く落ち着かせる方法を家庭で確立し、それを園に共有することで、一貫性のある対応が可能になります。

③ 園での頑張りを家で「デトックス」させる

園で癇癪を起こしている子は、心がいっぱいいっぱいの状態です。帰宅後は「早くして!」という言葉を封印し、あえて甘えさせる時間を持ちましょう。園からの帰宅後に荒れる現象は、外で頑張ってきた証。家を「心の充電器」にすることで、翌日の園での爆発を防ぐことができます。


「様子見」でいい?それとも「相談」すべき?判断基準チェックリスト

「この激しさは、いつか落ち着くの?」と不安な方のために、専門機関への相談を検討しても良い目安をまとめました。不安を抱え込むより、一度プロの視点を入れることが、結果として親の心の安定(そして子どもの安定)に繋がります。

チェック項目 注意が必要な状態
持続時間 1回1時間を超える癇癪が頻繁にある。
頻度と経過 3歳を過ぎても頻度が減らず、むしろ激化している。
他害・自傷 激しくお友達を叩く、自分の頭を床に打ち付けるなどの危険がある。
本人の生活 癇癪のせいで園生活が全く楽しめていない。

もしこれらの項目に多く当てはまるなら、このイヤイヤは相談レベル?家庭対応と専門相談の分かれ目をチェックしてみてください。「育て方が悪い」のではなく、「その子に合った特別なサポート」が必要な時期なのかもしれません。


専門家の視点|精神科医が解説

精神科医学の観点から見ると、癇癪は「感情調節機能(エモーショナル・レギュレーション)」の発達途上における、典型的な適応反応の一つです。大脳の辺縁系(感情の火元)が優位になり、それを制御すべき前頭前野(ブレーキ役)が未成熟なために起こります。特に集団生活においては、他者との欲求の衝突や感覚刺激が引き金となり、脳が「非常事態宣言」を発令している状態といえます。

注目すべきは、癇癪の背後に「共感能力の芽生え」や「自己同一性の確立」というポジティブな発達が隠れている点です。ただし、あまりに激しい場合は、ADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症(ASD)に伴う、脳の実行機能の脆弱性や感覚の非定型性が関係している可能性も否定できません。これは『障害』という重いレッテルとしてではなく、その子が社会と調和するための『取扱説明書』をアップデートするための、一つの重要な手がかりと捉えるべきでしょう。まずは医療・療育の専門家に繋がることで、環境調整(合理的配慮)という、お子さんの生きづらさを解消する手段を手に入れることができます。


育児に取り組むパパ・ママへ

毎日、園からの報告に胸を痛め、謝りながらの登園やお迎え、本当にお疲れ様です。あなたが今感じている申し訳なさや苦しさは、それだけお子さんのことを真剣に思い、向き合っている証拠です。お子さんがいつか、自分の気持ちを言葉にして伝えてくれる日は必ず来ます。それまでは一人で抱え込まず、園の先生や専門家を、お子さんを一緒に育てる「チーム」として頼ってくださいね。


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