「あとでね」が通じないのはなぜ?待てない子どもに有効な魔法のフレーズ10選
「ちょっと待っててね」「あとでね」
忙しい家事の合間や外出先で、つい口にしてしまうこの言葉。しかし、そう伝えた瞬間に子どもが火がついたように泣き出したり、足元にしがみついて離れなかったりすることはありませんか?
「あとでって言ってるのに、どうして伝わらないの?」と、パパやママもイライラが募ってしまうこともあるでしょう。実は、1歳から3歳頃の子どもにとって、「あとで」という言葉は「永遠に来ない未来」と同じくらい、あいまいで不安な言葉なのです。
この記事では、児童心理学の視点から、子どもが「待てない」本当の理由を解き明かし、今日からすぐに使える「魔法のフレーズ」を具体的にご紹介します。読み終える頃には、お子さんの「今すぐ!」という要求に、もっと穏やかな気持ちで向き合えるようになっているはずです。
【結論】「あとでね」が通じないのは、時間の概念がまだ育っていないから
結論からお伝えすると、イヤイヤ期の子どもに「あとで」が通じない最大の理由は、「時間の長さ」を測る脳の機能が未発達で、見通しが立たないからです。
大人にとっての「5分」はすぐですが、時間の概念がない子どもにとって「今ではない時間」はすべて未知の世界です。また、感情をコントロールする脳の部位(前頭前野)がまだ未熟なため、「やりたい!」という衝動を「待つ」という理性で抑えることが物理的に難しい状態にあります。
子どもを「待てる子」にするためには、言葉で説得するのではなく、「いつまで待てばいいのか」を視覚的・体感的にわかりやすく示してあげることが近道です。
- 抽象的すぎる:「あとで」が具体的にどのタイミングか想像できない。
- 不安を煽る:「今すぐ」叶わない絶望感が、パニックを引き起こす。
- 脳の未熟さ:衝動を抑えるブレーキ(脳の機能)がまだ搭載されていない。
なぜこれほどまでに感情の制御が難しいのか、イヤイヤ期特有の脳の発達状態について詳しく知りたい方は、こちらのハブ記事からチェックしてみてください。
あわせて読みたい基礎知識
脳の仕組みを理解すると、お子さんの「待てない」行動が、わがままではなく「成長の過程」であることがわかります。
イヤイヤ期の基礎知識まとめ|原因・特徴・よくある誤解を専門家視点で整理/
心理学が教える、子どもが「待てない」3つの科学的理由
単にしつけの問題ではなく、発達の段階として「待てない」のには、心理学・脳科学的な裏付けがあります。
1. 「時間の数直線」が存在しない
幼児の脳内には、過去・現在・未来をつなぐ「時間の数直線」がまだ完成していません。彼らにとって存在するのは「今、この瞬間」だけです。「あとで」と言われることは、彼らの世界から「やりたいこと」が消滅してしまうのと同義であり、強い喪失感を与えてしまいます。
2. ワーキングメモリ(作業記憶)の容量不足
待っている間に「何を待っていたか」を忘れてしまったり、別の刺激に気を取られたりします。脳のメモ帳であるワーキングメモリが小さいため、「待った先にいいことがある」という記憶を保持し続けることが難しいのです。
3. 「感情のブレーキ」が未完成
脳の「やりたい!」というアクセル(大脳辺縁系)は1歳頃から活発になりますが、それを抑える「ちょっと待て」というブレーキ(前頭前野)の整備が終わるのは、実は20歳を過ぎてからと言われています。イヤイヤ期は、まさに高性能なエンジンに効きの悪いブレーキがついている状態なのです。
特に、切り替えが苦手で一度言い出すと止まらないタイプのお子さんについては、以下の記事で詳しく解説しています。
行動タイプ別の深掘り記事
同じ要求を何度も繰り返してしまう背景には、不安やこだわりが隠れていることがあります。
イヤイヤ期に同じ要求を何度も繰り返すのはなぜ?/
待てない子どもに効く!「魔法のフレーズ」10選
「あとでね」を、子どもの脳が理解できる「具体的な言葉」に変換しましょう。状況に合わせて使い分けてみてください。
①「このお皿を洗い終えたら、やるね」
時間の単位を「家事の動作」に変換します。終わる瞬間が目に見えるので、子どもは見通しを立てやすくなります。
②「時計の長い針が『6』に来たら、おやつだよ」
視覚的な情報の提示です。まだ数字が読めなくても、「あそこまで行けばいいんだ」という物理的な目標が安心感につながります。
③「今はママ、メールを1つ送るね。終わるまでトントンしててくれる?」
ただ待たせるのではなく、「役割」を与えます。トントンというリズム運動は、脳を落ち着かせるセロトニンの分泌を促します。
④「やりたいんだね。まずは深呼吸して『できた』の準備をしよう」
子どもの意欲を認めた上で、待つことを「準備」と位置づけます。肯定的な言葉から入るのがポイントです。
⑤「タイマーがピピって鳴るまで、ここでお座りしてみようか」
音という聴覚刺激を利用します。親が「まだ」と言うよりも、機械の音が知らせてくれる方が子どもは納得しやすい傾向があります。
⑥「10数える間に、これを片付けちゃうね。1、2…」
カウントダウンは遊びの要素が含まれます。数が減っていくワクワク感で、待つストレスが軽減されます。
⑦「あと3回だけこれを見たら、おしまいにしようか」
動画などをやめる時に有効です。回数で示すことで、心の準備を促します。
⑧「〇〇ちゃんの順番は、次だよ。もうすぐだね!」
「今はダメ」ではなく「次はあなたの番」という期待感を持たせます。順番を意識させることは社会性の発達にも役立ちます。
⑨「あ、救急車が見えるまで待ってみようか」
外の世界の刺激を「待つための道具」にします。注意を逸らしながら、結果的に待てたという成功体験を積ませます。
⑩「待っていてくれて、ありがとう!すごく助かったよ」
これは、待てた後の仕上げの言葉です。「待つ=褒められる」という回路を脳に作ることが、最大の魔法になります。
実践!「待つ力」を育むためのトレーニングと環境づくり
言葉がけだけでなく、日頃から「待つ成功体験」を積み上げることが大切です。以下のチェックリストを確認してみてください。
- 短い待ち時間からスタート:「1秒待って」から始め、少しずつ伸ばしていますか?
- 約束を必ず守る:「あとで」と言ったら、必ずその約束を忘さず実行していますか?(信頼関係の構築)
- 待っている間を肯定する:「静かに待ててかっこいいね」と経過を褒めていますか?
もし、特定の場面(特にお風呂や食事など)でどうしても待てずに荒れてしまう場合は、生活シーン別の対策も併せて読んでみてください。
生活シーン別の対処法
場面ごとの「こだわり」や「ルーティン」が、待てない原因になっているかもしれません。
生活シーン別イヤイヤ期まとめ|朝・着替え・食事・風呂・寝かしつけの対処法/
「あとでね」がどうしても言えない…親のストレスへの対処
子どもに待ってもらいたい時、親側も余裕がないことが多いものです。「早くして!」「うるさい!」と感情的に怒鳴ってしまう自分を責めていませんか?
パパやママがイライラしてしまうのは、あなたが「真面目に育児に向き合っている証拠」です。イライラが爆発しそうな時は、一度その場を離れたり、深呼吸をしたりして、自分のメンタルを守ることを最優先してください。
パパ・ママの心を救うヒント
毎日イライラするのは、あなたが悪いわけではありません。限界を感じる前に読んでほしいメッセージです。
子どもに毎日イライラしてしまうのは普通?イヤイヤ期に感情が荒れる親の苦痛を知ってほしい/
専門家の視点|精神科医が解説
精神医学の観点から見ると、子どもが「待つ」という行為は、単なる忍耐ではなく「自己制御能力」の発現と言えます。これには「報酬系」と呼ばれる脳の神経回路が深く関わっています。「今すぐ欲しい(即時報酬)」という本能を抑え、「後で得られる大きな喜び(遅延報酬)」を選択する力は、マシュマロ・テストでも知られるように将来の社会適応力と高い相関があります。
しかし、イヤイヤ期の子どもにおいて最も重要なのは、ドーパミンを過剰に刺激する「厳しすぎるしつけ」ではなく、オキシトシン(愛着形成ホルモン)を介した「安心感」です。「待っていても、この人は必ず私の願いを叶えてくれる」という揺るぎない愛着(アタッチメント)の土台があってこそ、子どもは安心して「今この瞬間」の衝動を手放すことができるのです。
育児に取り組むパパ・ママへ
「あとでね」が通じないのは、お子さんがあなたを困らせたいからではなく、まだ「明日」も「5分後」も信じられないほど小さな世界で生きているからです。
毎日何度も繰り返される要求に、すべて完璧に応える必要はありません。時々は「ママも今は待てないの!」とお休みしながら、少しずつ、お子さんと一緒に「待つのも悪くないね」という時間を増やしていきましょう。
この記事が役に立ったら、他の記事も参考にしてみてくださいね。
次におすすめの記事
「あとで」の言い換えがわかったら、次は「ダメ」と言わない工夫も取り入れてみませんか?さらに育児が楽になります。
子どもへの「ダメ!」を減らすとイヤイヤが落ち着く?言い換えフレーズ実例集/

コメント